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のどの病気

扁桃炎

のどのイメージ写真

急性扁桃炎とは口蓋垂の左右に1個ずつある口蓋扁桃に、ウイルスや細菌による急性の炎症が起こる疾患です。
年に3〜4回以上、この急性扁桃炎を繰り返す場合、習慣性扁桃炎あるいは反復性扁桃炎と診断されます。
いわゆる風邪症状(高熱、寒気、頭痛、全身倦怠感、関節痛)と強い咽頭痛が現れます。
のどの奥を見ると、両脇の扁桃腺が赤く腫れているのが確認されます。

ウイルス性扁桃炎の場合は、抗菌薬が無効なため、風邪をひいた時と同様、症状に合わせて対症療法を行います。
解熱鎮痛剤や感冒薬等の内服と安静で、通常は1週間程度で治ります。

一方、細菌性扁桃炎の場合には、上記に加え抗生剤内服で軽快します。
また溶連菌感染の場合は、約10日間抗菌薬を内服します。
適切な抗菌薬投与のために、扁桃の細菌培養検査や溶連菌迅速検査、また血液検査を行う場合もあります。

ひどい扁桃炎を繰り返す場合は、扁桃腺を切除する手術(口蓋扁桃摘出術)を行う必要がありますので、連携病院へご紹介いたします。

扁桃周囲炎/扁桃周囲膿瘍

急性扁桃炎が悪化し、扁桃腺の周囲に炎症が及ぶと扁桃周囲炎へと進行します。
さらに扁桃周囲に膿だまりができ、その部位が大きく膨らむと扁桃周囲膿瘍と呼ばれる状態になります。
若い成人男性に多くみられます。

のどの腫れ、激しい痛み、発熱が生じ、口が開きにくい、発音しづらい、食事や水分が飲み込めない、強い口臭などの症状が現れます。
飲食ができない状態まで悪化した場合は、入院の上、抗菌剤、消炎剤、水分、電解質等の点滴を用います。
抗菌剤がよく効かないような場合や膿瘍がかなりひどい場合は、膿瘍に穿刺や切開をして排膿処置をすることがあります。
入院が必要な場合は、連携病院にご紹介いたします。

扁桃肥大

のどは常に外界にさらされており、細菌やウイルスによる感染を起こしやすいので、病原体から身を守るため、その粘膜下にはリンパ組織が発達しています。
このリンパ小節の集まりを扁桃と言い、口蓋垂の両側に見えるアーモンドの形をした部分を口蓋扁桃と呼びます。
みなさんが一般的に扁桃腺と呼んでいるものです。この口蓋扁桃が通常よりも大きくなった状態が、扁桃肥大です。

扁桃肥大は、軽度であれば気にする必要はありませんが、高度肥大となると気道を狭くし、いびきや閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS = Obstructive Sleep Apnea Syndrome)の原因となることがあります。
睡眠時無呼吸症候群は、現代人に非常に多い病気で、治療せずに放置してしまうと、高血圧、糖尿病、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞を発症するリスクが高くなり、また良質な睡眠がとれないことによる日中の傾眠とそれに伴う居眠り運転による事故等を引き起こす可能性があります。
必要に応じて、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査を行います。
また、睡眠時無呼吸の主たる原因が扁桃肥大であることが明らかな場合は、扁桃腺を切除する手術(口蓋扁桃摘出術)を行う必要がありますので、連携病院へご紹介いたします。

アデノイド増殖症

鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)というリンパ組織が、通常よりも大きくなった状態がアデノイド増殖症です。
アデノイドは3歳頃から増大し6歳頃に最も大きくなり、幼小児期に活発だった働きが、10歳を過ぎると急に小さくなります。
アデノイドの肥大は軽度であればあまり気にしないで大丈夫ですが、高度肥大の場合、それに伴って様々な障害を引き起こし、アデノイド増殖症と呼ばれます。

アデノイド増殖症では、はなとのどの間の上咽頭というところが閉塞することにより、鼻づまりやいびきなどの症状が現れます。
乳児では、哺乳がうまくできず、成長障害の一因となることがあります。

アデノイド増殖症も扁桃肥大同様、いびきや閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS= Obstructive Sleep Apnea Syndrome)の原因となることがあります。
典型的なアデノイド増殖症の患児では、日中の傾眠傾向や口呼吸のために、ボケっとしたいかにもしまりのない顔つきになります。
これをアデノイド顔貌といいます。
また、睡眠の質が著しく低下しているため、傾眠傾向のほか、注意力散漫、行動に落ち着きが無い、情緒不安定などの症状を伴います。
さらに、睡眠中の成長ホルモンや抗利尿ホルモンの分泌障害により、身長が伸びない(成長障害)やいつまでたっても夜尿(おねしょ)が治らないなどの症状がみられることもあります。

また、滲出性中耳炎が長引く原因となり、耳の聞こえが悪くなることもあります。

アデノイドは年齢とともに萎縮し、通常は小学校高学年になれば自然に小さくなるので、軽症であれば経過観察のみですが、重症の場合は、アデノイド切除術を行う必要があります。
その場合は、連携病院をご紹介いたします。

口内炎

口内炎は、口の中やその周辺の粘膜に起こる炎症の総称です。
ビタミン不足、疲労やストレス、口の内側を噛むなど様々な原因で起こり、口の中の粘膜であれば頬の内側や唇の内側、歯ぐき、舌など、どの部分にもできます。
全身疾患の一つの症状として起こるケースもありますので、口の中のどこにできているか、多発していないか、繰り返していないか、治りにくくはないか、などを総合的に判断する必要があります。

口内炎ができると、熱いものや冷たいものがしみたり、食べ物が触れただけでも痛みが強まり、食事を摂れなくなったりすることがあります。
唾液不足や口呼吸による口腔内乾燥により細菌環境が悪化して生じる場合が多いため、まずは口腔ケアやステロイド系の口腔用軟膏や抗菌薬などによる薬物療法、ビタミン剤投与などで経過をみます。
長引く口内炎の中には、まれにベーチェット病やSLE、クローン病などの全身疾患や結核や梅毒のような特殊な感染症、また悪性腫瘍の初発症状の場合もあるので、なかなか治癒しない口内炎には注意が必要です。

味覚障害

味がまるでわからなくなったり、感じ方がにぶくなったり、本来の味とは違った妙な味に感じられたりする障害です。
口が苦い、塩辛いなどの異常味覚もあります。
原因は、薬剤性、亜鉛不足、感冒後、心因性、加齢性、シェーグレン症候群等の自己免疫疾患などさまざまです。

急性喉頭炎

急性喉頭炎とは、喉頭の粘膜に急性の炎症が引き起こされている状態です。
主な原因は、風邪などのウイルス感染です。

症状は、急な嗄声(させい=声がかすれること)や失声(声が出ないこと)、のどの痛み、咳、痰等で、鼻水、鼻づまりを伴うことも多いです。

急性喉頭炎自体は、ウイルス感染が主体なので、抗菌薬が効かないことが多く、消炎剤、鎮咳薬等の対症療法で改善を図ります。
また、のどネブライザー療法(霧状の薬液を吸入する治療)を繰り返すことで改善することもあります。

最も大切なことは、嗄声が改善するまでの間、可能な限り声を出さないことです。
また、安静、十分な休養と栄養補給、水分摂取も必要です。
声の安静が保てれば、1~2週間程度で回復に向かいます。

しかし、声を出し続けていたり、細菌感染やその他特殊な合併症(結核、梅毒、真菌性)がある場合は長引くこともありますので注意が必要です。

慢性喉頭炎

急性喉頭炎の反復や慢性副鼻腔炎による後鼻漏で膿性分泌物が喉頭に流入、また、声の出し過ぎやタバコ、飲酒、粉塵などの喉頭粘膜への繰り返しの刺激により、喉頭炎症が慢性化した状態を指します。

嗄声(声のかすれ)、咳嗽、喀痰、喉頭違和感などの症状が続きます。

治療は、急性喉頭炎と同様、消炎剤、鎮咳薬などの他、細菌性が疑われる場合は、抗菌薬の投与、また禁煙、禁酒、声の衛生を徹底し、のどネブライザー療法を繰り返し行います。
また、空気汚染が関与している場合は、居住環境、労働環境を見直すこと大切です。

急性喉頭蓋炎

喉頭蓋という気管の入口にある蓋に細菌感染による炎症が生じる疾患で、悪化すると喉頭蓋が著しく腫れて気道を塞ぎ、呼吸ができず最悪のケースでは、窒息に至る大変恐ろしい病気です。

症状は、発熱、のどの痛みの他に息がしづらい、物をのみこみにくい、声を出しづらい、含み声などです。
このような症状があるときは、急性喉頭蓋炎の可能性があるので大変危険です。
呼吸苦が明らかな場合は、気道確保のため緊急気管切開という救命措置が必要になるので、躊躇せずに救急車を要請しましょう。
軽症から中等症の場合は、入院の上、抗菌薬や消炎剤の点滴治療を行います。
その場合は、連携病院へご紹介いたします。

喉頭麻痺

喉頭の神経が麻痺し、声帯およびその周囲の動きが悪くなった状態です。

のどは、しゃべる、食物をのみこむ、呼吸をするといった人間の生活にとって極めて重要な器官ですので、喉頭に麻痺が生じると、発声障害、嚥下障害、呼吸不全が生じうるわけです。
また、誤嚥(食物が気管支に入ってしまう)により、肺炎を起こす可能性もあります。

喉頭麻痺の原因としては、第10脳神経である迷走神経と迷走神経から枝分かれした反回神経という神経が障害を起こしていることが多く、さらにその原因として、感冒ウイルス、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹ウイルス等の感染や神経を圧迫する腫瘤が挙げられる。
腫瘤としては、大動脈瘤や縦隔腫瘍や食道癌、頸部腫瘍、甲状腺癌等が考えられます。

また、一側性(片側性)喉頭麻痺と両側性喉頭麻痺とがあるが、両側性の場合は気道が狭くなり、呼吸困難となることがあるので注意が必要です。

喉頭麻痺の有無については、喉頭ファイバースコープを用いて比較的容易に診断がつきます。
また、原因検索のためには、CTやMRI等の画像検査が必要です。その場合には、連携病院をご紹介いたします。

嚥下障害

食べ物、飲み物がうまく飲み込めないことを嚥下障害といいます。
のみこみは、

  1. 口腔期(舌が食塊を口腔の後方へ移動する)
  2. 咽頭期(鼻の後方を閉じ、また喉頭が上に上がり、喉頭蓋により気管の入口が閉まり、食道の入口が開き、そこを食塊が通過する)
  3. 食道期(食塊が食道を上から下へ移動するとともに、喉頭がもとの位置に戻り、鼻の後方が再度開き口腔とつながる)の3期、またその前段階の食べ物を認識し、口の中に入れ、噛み砕く

という一連のプロセスからなっています。

そのいずれかに問題が生じ、食べられなくなった状態が嚥下障害ですが、その原因はさまざまで、唾液の分泌不足による口腔内乾燥や加齢による歯牙の減少、炎症で痛みが強い、脳卒中の後遺症や神経や筋肉の加齢性変化でのどの動きに問題がある、神経や筋肉の病気などがある、口の中やのどに腫瘍がある、などさまざまです。

ファイバースコープで咽頭や喉頭に異常がないか観察します。

治療は障害の原因によって異なりますが、食事中の姿勢や一口量を調節する、食べ物の固さやとろみを工夫してみるといいでしょう。
さらにすすんだ検査や治療が必要な場合は、連携病院へご紹介いたします。

声帯ポリープ

声帯ポリープは、声の出しすぎや咳のしすぎ、上気道の感染、喫煙などが原因で声帯に炎症が起こり、声帯の縁に小さい隆起ができる病気です。

症状は声を出しにくい、声がかれるなどです。

治療ですが、まずは声を出さずにのどの安静を保つことが大切です。
咳払いはしないようにして、十分な水分摂取治療と加湿で、口腔や喉頭が乾燥しないようにします。
また必要に応じ、抗菌薬、消炎剤の内服、ステロイドの吸入を行います。
このような保存的治療にて数週間から数か月程度で改善する場合もあります。
一方、保存的治療で改善しないケースでは、手術(喉頭微細手術)の適応となります。
その場合は、連携病院へご紹介いたします。

声帯結節

声帯に生じる結節状の隆起です。
発声の際に最も強くこすれあう声帯の中央部分に生じます。
両側にできることが多く、若い女性や学童期の男児に好発します。
また、約95%は女性に発症すると言われており、特に保育士、幼稚園や小中学校の教員、歌手など日常的に大きな声を出す職業の方に多く認められます。

原因は、声の使いすぎです。
しかも、それが長期間にわたって続いている場合に、多くみられます。
嗄声、声域の幅の減少とのどの違和感などが主な症状です。

声の安静が最も重要な治療です。
保存的治療を行っても効果がないときや病変が高度な場合は、手術(喉頭微細手術)が必要となりますので、連携病院へご紹介いたします。

ポリープ様声帯

ポリープ様声帯は声帯が全長にわたり浮腫状に腫大した状態をいいます。
声帯ポリープや声帯結節は声帯の一部に限られた病変ですが、ポリープ様声帯では声帯全体が浮腫状に腫れます。
多くの場合、両側に生じます。
喫煙が原因といわれています。
嗄声(低音のだみ声となることが多い)を生じます。
それ以外に、のどの違和感や乾燥感などの症状を生じることもあります。

まず、禁煙が大切です。
これが達成されるだけでも、声帯の腫れが軽度のものであれば治ることがあります。
また、消炎剤の内服やステロイドの吸入治療が効果を示すこともあります。
しかし、これらの保存的治療で改善しない場合が多く、その場合は、、声帯粘膜下の浮腫状組織を広範囲に取り除く喉頭顕微鏡下手術の適応になります。
その場合は、連携病院へご紹介いたします。

咽頭癌

上咽頭癌

上咽頭は鼻の奥のつきあたり、咽頭の上部を指します。
上咽頭癌の約90%は、EBウイルスというウイルスが関与して発がんすると考えられています。
また、上咽頭癌は日本ではまれな疾患のため見過ごされやすいので、後述の症状が続いている場合には、注意が必要です。
鼻出血、耳閉感(耳のつまった感じ)、難聴といった症状が最初に現れることが多く、また頸のしこりで見つかることもあります。

中咽頭癌

中咽頭は、簡単にいうと口を大きく開けたときのつきあたりとその周辺を指します。
中咽頭癌とは、扁桃腺や舌の根本(舌根部)や咽頭後壁、口蓋垂とその周辺等にできる癌ということです。
最近では、ヒトパピローマウイルス(HPV)が発症に関与しているケースと喫煙・飲酒が原因になっているケースとがあり、HPV関連の場合は、比較的若年の男性に多いが、女性器に感染したHPVから感染したものとされています。
症状は、咽頭違和感や咽頭痛でときに嚥下障害や開口障害が出ることもあります。

下咽頭癌

下咽頭は食道の入り口で、咽頭の下部を指します。
下咽頭癌の約90%は50歳以上でみられ、また圧倒的に男性に多い傾向があります。
また、長年の過度の喫煙や飲酒が原因と考えられております。
症状は、喉の違和感、喉の痛み、飲み込みにくさ、頸のしこり、声のかすれなどです。

喉頭癌

喉頭は、いわゆる「のどぼとけ」にあたり、気管の入口にあります。
声を出す声帯がある場所で、喉頭癌は、喫煙者と大量にお酒を飲む方に多い疾患です。
また、喉頭癌は圧倒的に高齢男性に多い傾向があります。
また、長年の過度の喫煙や飲酒が原因と考えられております。
症状は、喉の違和感、喉の痛み、飲み込みにくさ、頸のしこり、声のかすれなどです。

上記の症状がみられた場合、まずファイバースコープで検査を行います。
咽頭癌、喉頭癌が疑われる場合は、CTやMRIなどの画像検査を行ったり、組織検査をする必要がありますので、連携病院へご紹介いたします。

その他(耳下部、顎の下が腫れている、舌の下が腫れている、頸部が腫れている)

流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスにより耳下腺が腫脹する感染症です。
片側あるいは両側の耳下腺の腫れや痛み、発熱、痛みに伴う食欲不振などの症状があります。
感染経路は、患者の唾液の飛沫を吸い込んだり、汚染されたものと接触したりして、鼻や口を通して鼻・咽頭部からウイルスを取り込むことにより感染します。
最も多い合併症は髄膜炎で、その他には睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを発症する場合があります。

症状としては、耳下腺や顎下腺の腫れや圧痛、飲み込む際の痛み、発熱等です。
また、ムンプス難聴という一側性の急性難聴を併発した場合、その難聴の予後は極めて不良で、ほぼ改善は期待できないと言われています。

ムンプスウイルスの特効薬は無いため、治療はもっぱら対症療法が中心となります。
耳下腺炎のために食べにくい場合は、あまり噛まなくても済む、消化の良いものにしましょう。

ムンプスウイルスは、比較的感染力が強く、同一家族内で発症者と抗体陰性の者が接触した場合、95%以上の確率で感染すると言われている。
また学校の同一教室内においても約90%は感染するというデータもあり、感染管理に細心の注意を払う必要があります。
抗体の無い人は、早めに予防接種を受けることをおすすめします。(なお、当院ではムンプスの予防接種は行っておりませんので、他の医療機関へお問い合わせください。)

耳下腺炎/顎下腺炎

唾液をつくる耳下腺(耳の前から下にある)、および顎下腺(顎の下にある)に炎症が生じた状態で、いろいろな原因で起こります。
主な原因はウイルスや細菌の感染です。
ウイルス性の代表的なものとしては、流行性耳下腺炎、つまりおたふくかぜがありますが、その他、細菌感染による急性化膿性耳下腺炎があります。
急性化膿性耳下腺炎では、抗菌薬や十分な飲水と口腔ケアで改善を図ります。
また、加齢、シェーグレン症候群、糖尿病などで唾液の分泌が著しく低下している場合には、唾液腺の感染と炎症を生じやすいので注意が必要です。

唾液腺腫瘍

耳の下や顎の下が腫れたときは、耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍の可能性があります。
それぞれ良性腫瘍と悪性腫瘍があり、良性腫瘍では腫れ以外の症状はほとんどありませんが、悪性腫瘍では顔面神経が麻痺したり、腫れた部位が痛くなることもあります。

唾石症

唾液腺や導管の中に結石が生じる疾患です。
大きな唾液腺には、耳の下にある耳下腺、顎の下にある顎下腺、舌の下にある舌下腺の3種類がありますが、唾石症のほとんどは顎下腺に発生します。
唾石は砂粒大の小さなものから数センチに及ぶものまで、大きさはいろいろです。
唾石の原因は導管の炎症や唾液の停滞、また唾液の性状の変化などです。

症状としては、ものを食べようとする、あるいは食べている最中に、顎の下(顎下部)が腫れて痛みが生じ、しばらくすると徐々に症状が消えていくのが特徴です。
導管(ワルトン管)の開口部に近い病変であれば、口の中の視診や触診で容易に診断がつきます。
また、正確な診断を得るためには、CTスキャンや超音波検査が有用です。

小さな唾石は開口部から自然に流出することもあります。
口底部にある唾液の導管内にある唾石は、局所麻酔下に口の中で切開して唾石だけを摘出します。
一方、顎下腺の中にできたものは、手術で顎下腺ごと摘出します。

頸部リンパ節腫脹

頸部には多くのリンパ節があり、口や鼻から病原体が侵入することに備えています。
このリンパ節が、炎症や癌の転移などにより腫れたものを、頸部リンパ節腫脹といいます。
炎症によるものは、ウイルスや細菌、結核の感染によるリンパ節炎です。
腫瘍によるものでは、転移性リンパ節(悪性腫瘍の転移)や悪性リンパ腫(血液の癌)です。

頸部嚢胞

嚢胞とは袋状の病的な構造物で、上皮に覆われた固有の壁を持ち、内腔には液体成分が充満しています。
頸部には側頸嚢胞、正中頸嚢胞などが発生します。
超音波検査、CT、MRI等で診断がつきます。
通常、症状は頸部の腫れのみで、炎症をともなうと痛みや周囲組織との癒着が出現します。
いずれの嚢胞も、頸部に発生した奇形の一種で、自然消退することはなく、治療は手術で摘出します。

甲状腺腫瘍

首の前に触れる"のどぼとけ"の前面に甲状腺があります。
甲状腺は生命活動維持に欠かせないホルモンを分泌する内分泌臓器です。
甲状腺腫瘍は、多くの場合、自覚症状は認められませんが、首の前に比較的堅い腫瘤として触知することができます。
腫瘍径が大きくなると首の前の隆起として容易に確認できるようになります。

その他(顔の動きが悪い)

顔面神経麻痺

顔面神経は、第8脳神経である聴神経(聴覚と平衡感覚の神経)とともに内耳道という耳の奥にある骨のトンネルの中を走行しています。
この顔面神経によって支配されている顔面筋が運動麻痺を起こし、顔の動きが悪くなった状態を顔面神経麻痺と言います。
原因不明のものをベル麻痺といい、その他、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で起きるもの(さらに耳鳴、難聴、めまいなどの症状を伴うものをハント症候群といいます)、外傷性のもの等があります。

症状は、突然顔面の筋肉の動きが悪くなり、額にしわを寄せられない、眼を閉じられない、口角が垂れ下がる、口角からよだれが垂れる、などの症状が生じます。
麻痺側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じられることもあります。
麻痺側の舌の前方3分の2あたりに味覚障害を伴うことがあります。
典型的な訴えに、ものを食べた時、金属を口に入れたような感じがするというものがあります。
目が閉じにくいため、涙で潤すことができず、角膜が乾燥しやすく、角膜炎を合併することもあります。

急に顔面の筋肉に麻痺が生じますので、症状から診断は比較的容易です。
しかし、両側に同時に発症する場合は、中枢性が疑われるので注意が必要です。
また、頭蓋内病変や神経の腫瘍の可能性があれば、MRIによる画像診断を要します。
血液検査などが必要になるケースもあります。

顔面神経は顔面神経管と呼ばれる狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経が腫れることによって顔面神経が圧迫され、これによって麻痺が生じると考えられています。

原因として多いのは、ヘルペスウイルスの再活性化によるものです。
ヘルペスウイルスに初めて感染した後、完治した後も、体内の神経節と呼ばれる部位に潜んでいます。
そしてストレスや疲れ、睡眠不足、ステロイドの服用、化学療法、癌の発症などで免疫力が低下すると再活性化して、顔面神経に感染します。
また、前述の水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因のこともあります。
その場合は耳の中に痛みや水疱が生じることもあります。
さらに、難聴、耳鳴、めまい症状を伴ったものをハント症候群(後述)といいます。
ほかには腫瘍や糖尿病などの代謝疾患が原因となる場合もあります。

治療は、副腎皮質ステロイド剤、血流改善剤、ビタミン剤などのほか、ウイルス感染の再活性化が原因の場合は抗ウイルス薬を併用します。
リハビリテーション療法も重要で、麻痺した筋肉のマッサージや、顔面の筋肉を働かせる練習などが効果的です。

耳性帯状疱疹(ハント症候群)

耳性帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスを原因として引き起こされます。
水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、水痘(水ぼうそう)と呼ばれる病気を引き起こします。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘が完治した後も体内の神経節と呼ばれる部位に潜みます。
通常は症状を引き起こすことはありませんが、ストレスや疲れ、寝不足、ステロイドの使用、化学療法、がんの発症などで免疫力が低下すると、潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することがあります。
そして、水痘・帯状疱疹ウイルスは皮膚や神経ずたいに感染を拡大させていきます。
そして、耳を中心にウイルスの再活性化による皮膚症状と神経症状が出現します。

耳性帯状疱疹では、耳に痛みや発赤を伴う小水疱が出現します。
小水疱は耳介や外耳道だけでなく、鼓膜や口の中に生じることもあります。
また、耳の奥を走行する顔面神経が同時に障害を受けることもあります。
すると、顔面の麻痺や味覚障害、急性難聴、耳鳴、めまいなどの症状が出ます。
さらに他の脳神経に炎症が波及すると、ろれつが回らない、声がかすれる、飲み込みが悪いなどの症状をきたすこともあります。

治療は、抗ウイルス薬の投与と耳処置、そして安静です。
また、神経障害を伴う場合は、通常は入院の上、ステロイド剤、ビタミン剤、血流改善剤等を投与します。
神経障害が生じている場合は、後遺症を残さないためにも可能な限り早めに受診してください。

江田きむら耳鼻咽喉科
診療科目 耳鼻咽喉科 小児耳鼻咽喉科
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